- 名前の由来
- 歴史
- 形 態
- 生 態
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- タンチョウの声
タンチョウは、漢字で「丹頂」と書きます。
丹は「赤」、頂は「てっぺん」の意味で、頭のてっぺんが赤いことからこの名がつけられたといわれています。
●和名:タンチョウ
●英名:Red-Crowned Crane(赤い冠のツル)
*日本を代表するツルという意味から、
Japanese Crane(日本のツル)ともいわれる)
●アイヌ語:サルルンカムイ(湿原の神)
絵画や史料などから、かつて江戸時代まではタンチョウは北海道各地にいて、冬は本州まで渡りをしていたと考えられています。しかし明治時代に乱獲と開発により激減し、一時は絶滅したと思われていました。
1924年(大正13年)に、釧路湿原の冬も凍らない湧き水の周辺で十数羽が再発見されました。その後1950年(昭和25年)に農家の庭先でトウモロコシの「にお」(保存用に実のついたまま円錐形に束ねたもの)をタンチョウがついばんだことから、地域の方によるコーンの給餌が成功しました。以来地元の方達の愛情に支えられ、冬の餌不足が解消されたタンチョウは、2021年(令和3年)現在約1,900羽まで個体数を回復してきました。
※現在の給餌は、国と北海道により行われています。
写真『「にお」とタンチョウ』
図 タンチョウの個体数の推移(北海道調べ)
タンチョウは、日本で最大級の鳥で、日本で記録されているツルのなかではもっとも大形です。一般にメスよりオスのほうが大きいが、野外で見分けられるほどの差はありません。
●大きさ:
①体長(嘴の先から尾の先までの長さ)110~150cm
②背の高さ 約150cm
③翼を広げた大きさ 220~240cm
●体重:6~11kg
●色:
<成鳥>嘴から首・翼の一部が黒色、頭頂部が赤色(羽毛ではなく、皮膚が露出している状態)、嘴はオリーブ色で、それ以外は白色です。翼を閉じたとき、尾が黒く見えますが、これは折りたたまれた翼の黒い部分が見えているためで、尾は白色です。
<雛>全身は薄茶色で、その後、白い羽毛に生え替わります。飛べるようになる頃には、首から上と背中の一部に茶色い部分が残るだけとなります。
<幼鳥>生後100日程で飛べるようになる頃には首から上と背中の一部に茶色い部分が残るだけとなります。(右の写真で左2羽が幼鳥)
<若鳥>生後1年以上経つと、成鳥と見分けることが難しくなりますが、2歳未満は翼の先が黒く、3歳未満でも翼に黒い斑点が残っています。
●食べもの
春~秋:湿原では、小魚類、カエル、ザリガニ、昆虫類、貝類、植物の芽や実など。干潟では、小魚類、カニ、エビ、小型の甲殻類、ゴカイ、貝類など。
冬:凍結しない水辺の小魚や他の水棲生物を採りますが、給餌場にまかれたデントコーンがもっとも重要な餌となっています。
●繁殖地(春~夏):
北海道東部(釧路湿原、風蓮湖周辺、別寒辺牛湿原など)
北海道北部(サロベツ原野など)
●越冬地(秋~冬):
釧路湿原周辺の鶴居村や釧路市阿寒町など
日本のタンチョウは、毎年、春から夏は湿原で産卵・子育て、秋から冬は人里で越冬・求愛と、季節によって小規模な移動をして、場所を変えながら生活しています。
①求愛(2月)
つがいのオスとメスは求愛のためのダンスをはじめます
②子別れ(3月頃)
親鳥がそれまで一緒にいた前年生まれの幼鳥を追い払います
③交尾(3月頃)
繁殖地の湿原に戻り、なわばりをつくって交尾をします
④産卵(3月中旬~)
枯れたヨシの茎を集めて巣をつくり、卵を産みます
⑤抱卵(3月中旬~)
オスとメスは交代で卵を抱きます
⑥孵化(5月初旬~6月)
抱卵をはじめてから約32日後に孵化し、薄茶色のヒナが生まれます
⑦生後1ヶ月
幼鳥は、全身が明るい茶色で、まだ翼は大きくなっていません
⑧生後2ヶ月
親鳥とほぼ同じ長さ(約60cm)まで成長します
⑨生後100日(8月中旬~9月下旬)
幼鳥は、生後100日前後で飛べるようになります
⑩湿原から人里付近へ(9月下-10月下旬)
冬は湿原が凍り、餌を採ることができなくなるため、秋になると湿原での生活を終え、家族で人里付近へ移動します
⑪給餌場(11月中旬-3月中旬)
自然の食料が不足してくると、人間が用意した給餌場に集まるようになります
⑫凍らない川のねぐら(10月下旬-3月中旬)
夜は冬でも凍らない水辺で、集団で眠ります
タンチョウの6種類の鳴き声とその意味をご紹介します。
●鳴き合い
オスとメスの2羽がかけあいで鳴いているときの声で、オスが「コー」と鳴くと、メスが「カッカッ」と応じて鳴きます。この行動には、2つの意味があり、1つはまわりのタンチョウに対するなわばり宣言、もう1つは、オスとメスがつがいの絆を深めるためと考えられています。
●飛び立ち
つがい相手や家族に対して、1羽が首を伸ばした姿勢で「クォ、、クォ、クォ・・・」と短く小さな声を出します。家族や仲間が同じように首を伸ばして鳴き出すと、声の間隔が短くなり、首を斜め前に倒して走り出して飛び立ちます。
●幼鳥の声
「ピーッ、ピーッ、ピーッ」というヒヨコのような鳴き声は、その年に生まれた幼鳥の声で、親に自分の居場所を教えていると考えられています。人間には、どの幼鳥の声も同じ様に聞こえますが、親鳥はちゃんと自分の子どもの声を聞き分けているようです。